| 革新的ガラス溶融プロセス技術開発プロジェクト | |||||||||||||||||||
| NEDO研究開発機構「エネルギーイノベーションプログラム」における「革新的ガラス溶融プロセス技術開発」プロジェクトが、平成20年度から24年度の5年間にわたり実施されることになり、前半の3年間のプロジェクトが平成20年7月にスタートしました。 <背景> ガラスは透明のため目立たちませんが、住居・自動車の窓、断熱材、食器・飲料びんなどから、太陽電池、液晶テレビ、非球面レンズ等のニューガラスに至るまで、広く身近に存在する素材です。優れた耐久性を有するガラスは長期の使用やリユースに耐え、リサイクル活用も進み、廃棄後は土壌・大気・水質汚染の心配もなく、地球環境の面からも好ましい素材といえますが、唯一その製造に多量のエネルギーを消費する点が弱点となっています。 ガラス製造業における消費エネルギーの大部分を占めるガラス溶融炉は、1867年に独のシーメンス氏が開発した炉を基本とし様々な改良や先進技術を盛り込みながら、140年を経て技術が受け継がれてきました。しかし、高品質化・低コスト化の要請、地球温暖化問題の高まり、そして一時的でしたがエネルギーコストの高騰などから、ガラス溶融技術の革新への期待は高まりつつあります。 その中で新たに誕生したガラス溶融技術「インフライトメルティング(気中溶解)」は、3年にわたるNEDO技術開発機構先導研究「直接ガラス化による革新的省エネルギーガラス溶解技術」プロジェクトにおいて原理的な有効性が証明され、平成20年度からは国家プロジェクトとして実用化に向けた研究開発が実施されることとなりました。 <プロジェクトへの期待> 現行のガラス溶融炉は、ガラス原料を融液上で徐々に溶かし、時間をかけて気泡を抜き組成を均質化します。 これに対して、インフライトメルティング法は、原料段階で均質化し、気中で瞬時に溶かし微小粒子の状態で気泡を排除するために、短時間でのガラス溶融が可能となります。また、高温雰囲気中に原料を直接投入するため、エネルギー的に高い効率が得られ大幅な省エネルギーが可能となると考えられます。 この技術が実用化されれば、ガラス溶融プロセスの消費エネルギーは1/3程度に低減でき、大幅なガラス溶融時間の短縮と炉の小型化、CO2、NOx等の排ガス削減、蓄熱室の省略、ガラス品質の向上、更には、不良ガラスや廃棄レンガの削減、ジョブチェンジ時間の短縮等の多くのメリットが享受できるでしょう。しかも、この技術は平面ディスプレイ用基板ガラス、光学ガラス等の小型炉から、ガラスびん、建築用・自動車用板ガラスなどの大規模炉まで、ほとんどの炉に適用し得る汎用性の高い技術と考えられます。我が国のガラス産業は、産業全体が消費するエネルギーの約1%を消費するエネルギー多消費産業の1つで、その大半をガラス溶融炉で消費しています。特に、高い品質が求められる液晶ディスプレイ等のニューガラスは生産量当たりのエネルギー消費が多く、しかも生産量は増す方向にあります。これら多くのガラス溶融炉にインフライトメルティング技術が導入され大幅な省エネが実現されれば、温室効果ガスの削減にも寄与できると考えられます。 <課題と国家プロジェクト> 一方、インフライトメルティング技術の実用化には克服すべき技術的課題がまだ多く存在します。例えば、原料が投入される高温雰囲気の安定性向上、炉材の耐久性、カレット(ガラス片)の効率的加熱、ガラス原料融液とカレット融液との均質化、炉の稼働条件変更時の対応などです。これらの総合的な開発を必要とするガラス溶融炉の革新は、巨額な設備投資を伴う極めてリスクの高い開発課題であり、多額の研究開発資金と時間を必要とすることから、企業レベルの取組みのみに委ねていたのでは早期の実用化は難しいと思われます。 そこで、NEDO技術開発機構は、同技術の実用化を加速し早急な確立を促すために「エネルギーイノベーションプログラム・革新的ガラス溶融プロセス技術開発」プロジェクト計画(平成20年度〜平成24年度)を打ち出しました。平成20年3月にプロジェクトへの参加募集がなされ、2件の応募の中から先導研究で実績のある我々の機関(5機関連合)の提案が採択されて新プロジェクト開始の運びとなったわけです。なお、平成20年7月の洞爺湖サミットに向けて策定された「Cool Earth−エネルギー革新技術計画」ではインフライトメルティング技術が1重要テーマとして位置づけられています(下図)。
<プロジェクトの概要> 本プロジェクトは、インフライトメルティング技術を軸とし、実用化の障害となる技術的課題を解消することにより、ガラス溶融炉の大幅な省エネを達成することが目的です。5年間の研究開発を経て最終的には、ガラス溶融工程が半日以下となるプロセスを確立し、2015年頃に小型炉の実用化、2030年までに大型炉の実用化を目指しています。 下図はインフライトメルティング技術に基づいたガラス製造プロセスの工程フローの例です。今回のプロジェクトの開発対象は、ガラス原料の造粒〜気中溶解〜融液化〜撹拌、およびカレット工程の予熱〜溶融となります。
研究開発体制を上図に示します。井上悟PLのもと(独)物質・材料研究機構、(国)東京工業大学(渡辺隆行研究室、矢野哲司研究室)、旭硝子(株)、東洋ガラス(株)および(社)ニューガラスフォーラムの5研究機関で課題を分担し、主要な課題については東洋ガラスおよび旭硝子に設ける共同実施場所において各機関協力の下に研究を進めます。 研究テーマは、次の(1)〜(3)の3つに大別されます。
(1)インフライトメルティング技術 このテーマの目標はインフライトメルティング技術の実用性について総合的な見通しを得ることにあり、平成22年度末までに原料溶融エネルギー目標値1000kcal/kg-glass以下、平成24年度末までに900kcal/kg-glass以下をソーダ石灰ガラスの日産1ton炉で実証します。具体的には、先導研究の経験とシミュレーション技術をベースに1ton炉を構築し、原料造粒・原料供給技術および加熱技術、炉の構成等について最適化し、多相プラズマと酸素燃焼炎とのハイブリッド加熱における電極消耗とプラズマ変動の抑制技術、シミュレーションの高精度迅速化技術などを開発するとともに、ガラス融液中の清澄挙動等の基礎的解明を進めます。対象とするガラス組成はソーダ石灰ガラスと液晶用無アルカリガラスの2つです。 (2)ガラスカレットの高効率加熱技術 このテーマの目標は、テーマ(3)と併せてカレット利用を前提とした新技術の総合的見通しを得ることにあり、平成22年度までにカレットの1200℃までの昇温所要時間を1分以内にし、平成24年度末までに溶融エネルギー目標値1800 kcal/kg-glass以下をカレットのみの日産1ton炉で実証します。 ガラス製造プロセスにはガラス原料(珪砂、石灰石など)のほかに、市中からリサイクルされたカレット(ガラス片)や工場内の循環カレットの利用が不可欠です。インフライトメルティングを実用化するにはカレットが併用できるプロセスであることが大前提となり、短時間でのカレット溶融を実現させる高速高効率な加熱技術の開発が必要となります。高速溶融には様々な方法が考えられインフライトメルティングはその候補となり得るが、カレットの微粒化が必要となり粉砕時に生ずる微粉カレットの加熱時の飛散、融液着地時の気泡巻き込み、粉砕コストなどの課題が存在するため、カレットを直接的に通電加熱する方法等も考えられます。このような加熱手段の選択を含めあらゆる検討が行われます。また、カレット予熱技術の開発も進める予定です。 (3)ガラス原料融液とカレット融液との高速混合技術 このテーマの目標は前述の通りであり、機械的撹拌による高速均質化により、原料融液とカレット融液との混合・均質化を平成22年度までに4時間以内、平成24年度までに2時間以内で行えることを日産1ton炉で実証します。 |
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| <予算> 平成20年度 : 総額 3.3億円 平成21年度 : 総額 4億円 平成22年度 : 総額 3億円 |
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| <研究成果> | |||||||||||||||||||
| 下記の発表をご覧ください。 (1)論文発表 (2)NEDO報告書 (3)学会発表 1) 八田、Yao、渡辺、松浦、Characteristics of Multi-Phase AC Arc Discharge for Innovative Glass Production., 第9回アジア太平洋プラズマ科学技術会議(2008年 10月8-11日、中国・黄山) 2) Yao、八田、渡辺、矢野、In-flight Melting Behavior of Different Glass Raw Materials in 12-Phase AC Arc.,同上。 3) 八田和之,Yao Yaochun,松浦次雄、 渡辺隆行、ガラス造粒粉体のインフライト溶融に用いる多相アーク発生技術、化学工学会第74年会(横浜国立大学)、2009年3月18-20日。 4) 渡辺隆行,八田和之,Yao Yaochun,矢野哲司、In-Flight Melting Behavior of Different Glass Materials in Multi-Phase AC Arc.、プラズマ科学シンポジウム2009 (名古屋大学)2009年2月2-4日。 5) 八田和之,Yao Yaochun,松浦次雄,渡辺隆行、Generation of Multi-Phase AC Arc for In-Flight Melting of Granulated Glass Raw Materials., 同上。 |