機関誌NEW GLASS [最新号目次] [目次検索] [購読申込] [機関紙表紙ギャラリー]



New Glass 139 Vol.38 No.2 (2023)


巻頭言

ガラスは古代よりいつも新しかった ------- p.1 [試し読み] ニューガラスフォーラムが誕生してから 40年近く経った。当初「ニューガラス」と言われたガラスも既に「オールドガラス」となり,ニューガラスとの名称に違和感を唱える人もいるやに聞く。私も,「ニュー」と言う限り,ニューでないガラスがイメージできなく,逆の違和感を持っていたことは確かである。古代から都が遷れば「新都」と呼び,開墾すれば「新田」と名付けるように,また世界を見てもインドのニューデリーのように安易にニューを使って来たことにも原因があるかもしれない。

日本電気硝子(株)顧問 有岡 雅行


特集「ガラスの結晶化とその応用〜最近の展開〜」

1) ガラスの結晶化によるナトリウムイオン電池用活物質の合成 ------- p.3 [試し読み] 結晶化ガラスは前駆体となるガラス材料が,熱処理中に発現する核形成と結晶成長によって得られる結晶体と非晶質を含む複合セラミックスのことを示す。結晶化によって,ガラス単独では発現できない機能が誘起されることから,これまでに結晶化ガラスを用いた数多くの製品が開発されている。本稿では著者らが推進している全固体ナトリウム電池に資する機能性結晶化ガラスの開発に絡めながら,ガラスを含む非晶質材料の結晶化に対する考え方について紹介する。

長岡技術科学大学 本間 剛

2) 透明なリチウムマイカ結晶化ガラスのイオン交換による化学強化と機能化 ------- p.7 [試し読み] ガラスの強化方法の一つに化学強化がある。この方法はガラス中のアルカリ金属イオンを溶融塩中で大きな陽イオンとイオン交換し,表面付近に圧縮応力を発生させるものである。化学強化されたガラスは,身近なところでは,スマートホンの強化ガラスなどとして使用されている。また,このイオン交換は化学強化だけでなく,ガラス表面に機能を付与する目的でも行われる。例えば,Ag+イオンをイオン交換すると,ガラスに光導波路や光スイッチなどの光学機能および抗菌性といった機能を付与できる。

信州大学 樽田 誠一

3) 放射線検出のための結晶化ガラス材料 ------- p.11 [試し読み] 放射線(X線,ガンマ線,中性子線,荷電粒子線等)の計測は,医療機器や資源探索,高エ ネルギー物理学実験など様々な用途で行われている。放射線を計測する方法の一つとして,蛍光体と光電変換素子(光電子増倍管,Si半導体等)を組み合わせた方法がある。光電変換素子だけで高エネルギーX線,ガンマ線,中性子線を直接検出することは困難であるが,蛍光体を用いることで,高エネルギーの当該放射線を低エネルギーの光子に変換すれば,当該放射線を高効率に検出することが可能 となる。

秋田大学 河野 直樹

4) ゾル ? ゲル法によるシリカ ?REPO4 透明結晶化ガラスの無濃度消光緑色・紫外発光 ------- p.15 [試し読み] 発光中心は凝集すると一般に発光効率が低下する。この現象は濃度消光として知られている。濃度消光は,(1)発光中心間での交差緩和,(2)共鳴励起移動による消光中心へのエネルギー伝達,(3)複数の発光中心の共役(複合化)によ る消光中心への転化,などによって起こるとさ れている。このうち(2)の機構が支配的な場合に,もし消光中心が全く存在しなければ,原理的には濃度消光は起こらないはずである。 しかし,実際の発光材料は,蛍光体粉末のようなμm オーダーの粉末であっても非常に多数の原子からなるため,消光中心を完全になくすことは現実的でない。

東京都立大学大学院 梶原 浩一

5) 光非線形結晶化ファイバーの創製と光学特性:伝搬損失の評価およびポッケルス効果による光変調 ------- p.20 [試し読み] 通信の光波制御にはポッケルス効果により動作する光導波路素子が用いられており,大きな自発分極を有するLiNbO3単結晶により構成されている。一方,シリカガラス製の光ファイバーは光波伝送を担うが,異種材料やモードプロ ファイルの不一致などから光波制御素子との物理的接合や光結合に困難を伴う。これらの解決策として,我々の研究グループは光ファイバーと同じガラス材料をベースとしたファイバー型光波制御素子の開発を提案してきた。

東北大学大学院 高橋 儀宏 他4名


研究最先端

窒化反応を利用した酸窒化ケイ素系ガラスの作製 ------- p.24 [試し読み] 酸窒化物ガラスは機械特性,化学的耐久性などが優れたガラスとして知られている。しかしながら,酸窒化ケイ素ガラスの原料となる窒化ケイ素は1500℃程度で熱分解してしまうことから,溶融法で酸窒化ケイ素ガラスを作製することは難しい。ゾル-ゲル法で作製することも試みられてきたが,大量の窒素を導入することが難しいことなどから酸窒化ケイ素系ガラスについての研究は世界的にも近年あまり行われていない。このような状況の下,酸窒化物ガラスの作製に興味を持ち,スウェーデンでの在外研究を経て,ここ数年の間にアンモニアガス雰囲気中での酸化物の窒化反応を用いることで酸窒化物ガラスを作製するという研究を進めてきた。

物質・材料研究機構 瀬川 浩代


ニューガラス大学院講座

ガラスの組成と物性の相関−実用ガラスの組成はどのように決められているのか−(その3) ------- p.29 [試し読み] 主成分としてSiO2に加えてAl2O3を含み,ガラス繊維用や最近注目を浴びている化学強化ガラスなどに使われている「アルミノシリケートガラス」について,その組成や特徴および実用化の経緯について解説する。また,新しい組成が開発される過程でその組成が物性等種々の要因を考慮しながらどのように決められるのかについて,前回代表的ホウケイ酸ガラスの「パイレックス」の組成を例に挙げて解説したのに続き,今回は繊維用のアルミノシリケートガラスを例として解説する。さらに,ガラスの組成と物性の関係で組成によってもたらされる特殊な構造に起因する場合について,化学強化用のアルミノシリケートガラス組成を例として解説する。

日本板硝子(株) 長嶋 廉仁 他1名


研究機関紹介

1) チューリッヒ大学滞在記 ------- p.35 [試し読み] 2023年 1月〜3月末までのおよそ3ヶ月間,学術変革領域「超秩序構造が創造する物性科学」の若手の海外短期派遣にて,スイス,チューリッヒ大学のJuerg Hutter 教授の研究室に滞在した。現地での研究活動とともにチューリッヒ大学,そしてスイスでの暮らしについてお伝えしたい。

京都大学 手跡 雄太

2) フランス・ソルボンヌ大学滞在記 ------- p.38 [試し読み] 筆者は,2022年9月から 2022年12月にかけて,岡山大学とフランスのパリにあるソルボンヌ大学間での交流協定による支援を受け,研究留学を実施する機会をいただいた。筆者にとって初の単身海外であり,期待と不安を抱えながらの 3ヶ月弱であったが,貴重な経験を得ることができたと感じている。そこで本稿では,留学先 である ソルボンヌ大学のMatthieu Micoulaut教授の下での研究生活および芸術と華の都・パリにおける生活について報告させていただく。

岡山大学大学院 長尾 正昭

3) オールボー大学滞在記 ------- p.41 [試し読み] 筆者は,昨年12月より2ヶ月半,学術変革領域研究「超秩序構造科学」の海外派遣制度による支援を受け,デンマーク王国のAalborg(オールボー)市にあるオールボー大学に滞在する機会を得た。この制度は博士課程学生もしくは博士課程への進学予定の修士学生,博士研究員,助教を対象とした若手海外派遣による海外展開と若手支援を目的としたものである。本稿では,私自身初めての外国暮らしということで,新鮮な経験ばかりであったオールボーでの生活について,滞在によって経験した日本との文化や生活様式の差異や,滞在の記録を記す。

弘前大学 佐々木 俊太


ニューガラス関連学会

日本セラミックス協会 2023年年会参加報告 ------- p.44 [試し読み] 周辺のオフィスビルと見間違えたのではないかと感じるほど綺麗な建物が目的地である神奈川大学みなとみらいキャンパスであり,日本セラミックス協会2023年年会の開催地である。1F にはカフェやレストランが,建物内にはエスカレーターとエレベーターが備わっており,さながら最新のオフィスのようであった。2023年年会は,2023年3月 8日〜10日の3 日間にわたって開催され,2022年の日本セラミックス協会秋季シンポジウムと同様,現地とオンラインによるハイブリッド開催であった。大きなトラブルに見舞われることなくスムーズに進行していたように感じた。

名古屋工業大学 岡 亮平


私の研究ヒストリー

研究生活を振り返って(その2) ------- p.48 [試し読み] 1994年に岡山大学の特別設備としてXPSを導入することができ研究の幅が大きく広がった。当時は全学で利用できる共同機器センターは整備されておらず,研究室が個々に要求書を書き学内調整を経て文部省に要求するシステムであった。学部で要求順位 1位になりその学部が学内でトップの順位でないと文部省へ要求できないことになる。当時幸いにも工学部が要求順位 1位であり,我々の要求がテーブルに乗ることになった。しかし採択されない状態が7年ほど続いた。

岡山大学名誉教授 三浦 嘉也


コラム

我が家のアスパラガス ------- p.53 [試し読み] ちょうど 1年前にこのコラムに書かせていただいたが,私の住んでいる住宅団地には建築協定があり,敷地内の緑化が義務付けられている。従って敷地に何か植物を植える必要がある。我が家では植えるのであれば食べられるものが良いと,家の周囲に何種類か実や芽が食べられる木などを植えてみたのであるが,今回は(木ではないのだが)アスパラガスについて紹介しようと思う。さて,家を建ててから 3年ほど経った頃、ホームセンターでアスパラガスの苗(根)を見かけた。アスパラは好物であるし,一応敷地の緑化にも多少は役に立つように思われたので,これを 1株買って裏庭に植えてみた。

(一社)ニューガラスフォーラム 松野 好洋


[目次一覧へ戻る]

[検索ページへ]

[購読申込ページへ]