事業報告及び計画
2021年度事業報告書  2022年度事業計画

2022年度事業計画
2022年4月1日より2023年3月31日まで
(事業の概要)

 一昨年初頭から急速に世界中で感染が拡大し、その後変異を繰り返しながら現在も世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスは、2022 年度も世界情勢及び世界経済に極めて多大な影響を及ぼすものと考えられる。日本では相対的に重症者数、犠牲者数は抑えられているが、ガラス業界を含め、日本の経済活動にもこの問題は引き続き直接的及び間接的に大きな影響を与えるものと予想される。
 ガラス産業界の置かれた環境は厳しいものの、「after コロナ」、「カーボンニュートラル」時代に対応した考え方、方針の基に、ガラスの高機能化、高付加価値化、製造工程の脱炭素化等に向けた取り組みを継続し、進めていくことが必要と考える。ニューガラスフォーラムは、ガラスの技術領域を支える団体であり、今後とも会員企業の期待に応えられるよう、基幹の活動を進めていくとともに、必要な調査とその分析及び提供、従来の活動の重点化や見直し、必要に応じて新しい活動への取り組みなどを進めていきたい。
 国内の大学におけるガラス基礎研究の縮小や、これに伴う人材の減少などの課題への対応策として「ガラス研究振興プログラム」の検討、立ち上げ準備を進めてきたが、昨年6 月のNGF 総会および7 月のGIC 総会にて、運営組織(NGF とGIC 共催)、規程を含めた全体承認が得られた。その後、実行組織等の整備、研究テーマ募集、助成資金の募集を行い、現在応募テーマの選考審査を実施中である。3 月中に採択テーマを決定し、5 月から研究助成を開始する。また、下半期には中間意見交換会を開催して採択された研究者と意見交換を行うとともに、2023 年度の研究テーマの募集、審査を順次実施していく。
 ガラスデータベース”INTERGLAD”は、2021 年度に実施した利用料金の改訂により文献収集費用の確保の目途が立った。引き続き、データの拡充、利便性向上や機能の拡充のための開発を進めていく。最新の技術情報や新製品情報、技術動向などの情報発信を主な目的とする機関誌”NEW GLASS”の刊行は内容の充実に努めつつ継続する。また、ガラスの研究・開発・製造・応用に携わる人材の育成に寄与するために行っているニューガラス大学院は、新型コロナ感染拡大のため2021 年度はWeb開催としたが、2022 年度はWeb+リアルの併用での開催を予定する。
 研究会、若手懇談会、セミナーについては、2021 年度はWeb 開催としているが、2022 年度は新型コロナ感染状況に応じて、Web と直接参加の併用等を含めて最適な開催方法を選択していく。
 昨今、カーボンニュートラルに関しては日本の多くの産業界において官民を挙げての取り組みが進行しているが、ガラス産業界では企業単位での活動が中心となっている。そのためガラス産業にとって重要な技術領域であるにもかかわらず、技術情報の共有化が十分には行われていない。そこで、2022 年度よりカーボンニュートラルに関する海外を含めた技術調査を開始し、技術課題の整理、技術情報の共有化を進める。
 また、今年は国際ガラス年であることから国際ガラス年日本実行委員会の活動への協力を含め、国際的な活動への取り組みは継続的に進める。
以下、定款の箇条に従い、2022 年度の事業計画を述べる。

1.ニューガラスに関する産業及び技術開発動向等の情報の収集及び提供 (定款 第4条第1項第1号関係)

 ニューガラスフォーラムの活動(研究会、セミナー、講演会等)や外部学会等で得た技術開発動向や情報を、当会が運営するホームページ、機関誌”NEW GLASS”を通じて、会員への情報発信を継続する。ホームページは、「シーズとニーズの出会いの場」と「メーカーとユーザーの積極的な情報交換の場」として運用し、各種のイベント企画などのタイムリーな情報発信に努める。

2.ニューガラスの産業及び技術開発等に関する調査 (定款 第4条第1項第2号関係)

 カーボンニュートラルに関しては、昨今、日本の多くの産業界において官民を挙げての取り組みが進行している。一方、日本のガラス産業界においては、製品ごとにガラス組成、溶融方法、窯サイズ、CO2 排出量レベルが大きく異なることもあり、CO2 排出量の削減に関して、主に企業ごとの活動が中心であった。そのためガラス産業にとって重要な技術領域であるにもかかわらず、技術情報の共有化、例えばカーボンニュートラルを実現する上でネックとなるガラス製造プロセス特有の技術課題の整理・共有化なども十分には進んでいない。これに対して、欧米では技術課題
の共有化のみならず、大規模な窯に対して、水素燃焼と電気熔融を組み合わせた方法の提案や、天然ガスに水素を混焼することでCO2 排出量を削減する研究などが設備メーカーとガラス製造企業で共同して行われるなど、先行しているのが現状である。
 そこで今般、日本のガラス産業におけるカーボンニュートラルを実現するための端緒となるよう、当ニューガラスフォーラムにおいてこれに関連する調査事業を開始する。2022 年度は、ガラス産業のカーボンニュートラル化に関する製造プロセス情報などに対して、海外を含めた調査、収集およびその報告会を計画する。なお、本調査事業では、カーボンニュートラルに関する調査をベースとして、ガラス研究の展望を討議するための会議、ロードマップなどに展開していくことを検討する。

3.ニューガラスに関する研究開発 (定款 第4条第1項第3号関係)

三次元光デバイス・ナノガラス研究事業
  2022 年度は、NEDO プロジェクト「ナノガラス技術」(2000 年〜2006 年)と「三次元光デバイス高効率製造技術」(2006 年〜2011 年)で得た成果とこれ等に関連して新たに創出した研究成果の普及を具体的製品候補に対して昨年度に引き続き実施する。
 レーザを利用した加工やデバイス技術は、すでに複数の企業において使用されるようになってきており、その動向の確認に留める。一方、従来手法と全く異なる二種類のガラスの強化技術において、上記のプロジェクト終了後に新たな技術の進展と新強化原理を発見し、それらに基づいた新たなガラス強化の基礎研究とそれらを使用した応用技術の展開を図ってきた。既に実験レベルでは、本ガラス強化技術の適用により、折り畳み可能な超薄板ガラスの作製に成功しており、現在は実用化に向けた処理条件の最適化等を実施している。2022 年度はこのガラス強化技術を適用したガラス製品の
実用化に対し、技術的なサポートを昨年度に引き続き実施する。
 また、2022 年度中には強化技術の見極めを行い、以降の方針を決めたい。

4.ニューガラスに関する講習会、講演会、セミナー及び研究会等の開催 (定款 第4条第1項第4号関係)

(1)研究会の開催
  ガラス産業発展のための産学官交流および研究者・技術者の育成を目的とした研究会を、前年度と同様、年度内計6 回開催する。ガラス科学技術研究会および評価技術研究会を各2 回開催するとともに、両研究会の相乗効果が期待されるガラス科学技術・評価技術合同研究会を2 回開催する。コロナ禍の今後が未だ見通せない状況であるため、当面はWeb での開催を前提とするが、状況次第では、通常の対面方式にWeb 方式を組み合わせたハイブリッド方式での開催も検討する。また、できるだけ多くの方々が参加できるよう、過去参加者へのメールでの案内やホームページでの案内に加え、若手懇談会等、他事業とも連携して参加者を募っていく。

@ガラス科学技術・評価技術合同研究会
  ガラス科学技術研究会と評価技術研究会の合同での研究会は、設定したテーマに対して、ガラスの科学技術と評価技術の両面から幅広く講演内容を企画できることもあり、これら両面からの知識の習得、新しい交流の機会創出等といった相乗効果が期待される会として運営されている。
 2022 年度も前年度同様、年度内2 回の開催を予定しているが、2022 年が記念すべき国際ガラス年であることを意識した企画を目指し、12 月のクロージングの前に全2 回を開催する。

Aガラス科学技術研究会 (主査:東京都立大学 梶原 浩一 教授)
  本研究会は、ニューガラス産業の基盤となる「ガラス基礎技術の発展と普及」を目指し、大学、公的研究機関および企業における「ガラス技術の新たな展開や顕著な進展に関する話題」を取り上げる。併せて、「最近の製品化事例」などを交えながら、産・学・官の第一線で研究開発に携わる方々を講師として、企業の発展に不可欠な「科学的理解と基礎技術の深化」について参加者が考え、議論し、交流する場を提供する。対象とする基礎技術は、ガラス素材創製、ガラス構造、ガラス表面、溶融・成形・加工技術、計算機科学などである。
 2022 年度も前年度同様、年度内2 回の開催を予定するが、新型コロナ感染状況が改善すれば、うち1 回については講演会を含む見学会の形とする。

B評価技術研究会 (主査:豊橋技術科学大学 武藤 浩行 教授)
 「ガラス製品の開発支援技術の強化と普及」に向けて、ガラス製品の商品化において求められる各種評価技術について、企業における現状と課題、それらに関連する大学・公的研究機関の研究や類似材料の評価例などを話題として取り上げる。産・学・官の第一線で研究開発に携わる方々を講師として、「評価技術および評価の深掘と共有化」を目的とし、ガラスとその表面に関する分析・解析技術、熱物性、機械物性、光物性、形状等の測定技術を対象とする。
 2022 年度も前年度同様、年度内2 回の開催を予定するが、本研究会については前年度同様全2 回を講演会形式で開催する。なお、各回の具体的テーマについては幹事会にて検討中であるが、昨年度の参加者アンケートの結果から、今年度はできるだけ“基礎的”な評価・分析技術をテーマに取り上げる。

(2)セミナーの開催 (主査:滋賀大学 徳田 陽明)
 ニューガラス製品の研究開発に携わる研究者・技術者等を対象に、ガラス技術およびニューガラス応用製品について、話題性の高い最新技術動向等をタイムリーに紹介することを目的として開催している。2021 年度は、特に第2 回に開催した「機能性膜− 新しい製法、医療・自動車への応用−」が好評を博し、産官学より多くの研究者の参加をいただいた。
 2022 年度も前年度同様、年度内3 回の開催を予定するが、2022 年が国際ガラス年であることを意識した企画とする。また、内1 回についてはコロナ禍の状況次第ではハイブリッド形式での開催とする。また、参加者の募集については研究会と同様に他講演会と連携して進める。

(3)講座の開催  

ニューガラス大学院 (委員長:愛媛大学 武部 博倫 教授)
 ガラスの研究・開発・製造・応用に携わる人材の育成に寄与するため、大学教員や企業の研究者・技術者等の各分野の一流講師による、基礎・応用課程の計18 テーマでの講座を各2 日、計4 日間の日程で10 月に東京で開催する。ニューガラス大学院は、単に講義を聞くだけでなく、その場で質問し、また懇親会等を通じて講師や受講者同士が知り合える場とすることも目的の一つである。対面講義を重視したため2020 年度はウイルス禍により開催を中止し、また2021 年度はWeb による開催とした。2022 年度は、当初の目的を果たし、また今秋の状況に関わらず開催するために、対面講義と
Web 参加を組み合わせた形式を検討し、状況に応じて柔軟に対応する。
 基礎課程では材料科学からガラスの諸物性について、また応用課程では、ご好評をいただいている製造フローに沿っての各技術の講座とする。企業の若手研究者・技術者や大学院生の他に、GIC 会員やガラスに関心を持つユーザー及び他分野の研究者・技術者などにも広く呼び掛け、中堅の方々の受講も募る予定である。本年度は7テーマで新講師が担当する。また、機械学習・マテリアルインフォマティックスに関する講座を、2021 年度に引き続き特別講座として応用課程で実施する。

(4)若手懇談会の開催 (会長:AGC テクノグラス(株) 山口剛)
  若手懇談会は、当会の会員企業及び当会に関連の深い産・学・官の若手(2022年度登録会員18 名)が、最新のニューガラスに関する研究・開発課題・用途に関し意見交換を行うとともに、会員間の人的交流を行う場として実施している。会の運営は産・学より選出された役員(11 名)が自主的に行い、年4 回の役員会を開催する。本年度は意図して通年テーマは設けず「興味を広げる」という方針に基づき、年3 回(5 月、10 月、2023 年2 月)の講演会を開催予定である。10月講演会は国際ガラス年2022 とのコラボ企画とした。全ての開催は新型コロナウイルス感染状況をみて通常開催に加え適宜Web による開催を取り入れる。また、知見を拡げる場を提供する目的から、内1 回は現場を直に知る機会とするため、見学会を実施する予定であるが、新型コロナウイルス感染状況を考慮して開催判断を行う。
 若手懇談会は、現在、講演と交流を意図して活動しているが、将来のガラス分野の研究・開発を担う若手人材の啓蒙や育成の場としても活動することを考え、他の講演会と差別化するため昨年10 月より導入している教育的・基礎的な講演を継続する。さらに、若手懇談会会員のみならず、できるだけ多くの方々が参加できるよう他講演会と連携して参加者を募る。

(5)見学会の開催
 ガラスに関する知識・知見の向上と交流を図るため、会員企業やガラスに係わる企業・施設等を訪問する見学会を年1〜2 回開催する。内1 回は若手懇談会の見学会と兼ねて実施し、その他に、会員のニーズに基づいて、会員、非会員企業を対象として実施することを検討する。但し、若手懇談会見学会と同様に新型コロナウイルス感染状況をみての開催とする。

5.ニューガラスに関連するデータベースの構築、維持及びその提供 (定款 第4条第1項第5号関係)

国際ガラスデータベース”INTERGLAD”(委員長:東京大学 井上 博之 教授)   
  データベースを充実させるための重要な要素であるガラス特性及び構造データの追加登録を今年度も継続して行う。毎年、特性と構造データを合わせて約1 万件のガラスを登録しており、現在約38 万件のガラスデータ数となっている(2022 年2 月時点)。また、変化の著しいインターネット環境に対応して、既存ユーザーの利便性を損なわないよう、最新のVer8 機能の継続的な改良・整備を進める。
 普及のためのPR 活動や講習会を開催し、これらを通じて得られる機能改良などに関するユーザーのご要望への対応を行う。2020 年度から講習会の開催方法をWeb に変更したところ、多くの方にご参加いただいたので、2022 年度も引き続きWeb 方式を採用する予定である。今年度も2 回の講習会のうち1回は、初めてINTERGLAD を利用するユーザー向けとし、普及を促進する。また2021 年度に、初めてデータベースを活用した機械学習に関する勉強会を2 回開催したが、大変多くの受講者にご参加いただき、関心が高いことがわかった。そこで2022 年度も引き続き開催を計画する。

6.ニューガラスに関連する産業及び科学技術に関する機関誌の発行 (定款 第4条第1項第6号関係)

機関誌“NEW GLASS”の発行 (編集委員長:名古屋工業大学 早川 知克 教授)
 ニューガラスに関する国内外の新製品・新技術の紹介、ニュース、関連産業の動向や技術解説等を内容とした機関紙“NEW GLASS”を年3 回(7 月、11 月、3 月)発行し、会員や一般購読者(約80 名)に役立つ情報を提供する。発行にあたっては、学、産で構成される編集委員会を年3 回開催する。開催にあたり新型コロナウイルス感染状況を考慮しつつ、通常開催に加えてWeb 開催を検討する。掲載記事の内「特集記事」は、話題性が高い技術テーマを取り上げ、その分野の主に産・学の方に投稿頂き、毎回、総論を含めて、体系的に掲載できるよう努める。
 また、2022 年度は国際ガラス年2022 の様々なイベントが予定されており、それらについても特集を組み、取り上げていく。

7.ニューガラスに関する標準化・規格化の調査研究 (定款 第4条第1項第7号関係)
  
(1)JIS R 3252-1994「ガラスのレーザ干渉法による均質度の測定方法」
 日本光学硝子工業会が国際幹事国であるISO 17441(*)は、JIS R 3252 を引用して作成されているが、データ解析方法の多様化などを理由に、今後、改訂が予定されている。この改訂作業を受けて、当該JIS についても、改訂後のISO 17441 に準じた規格改定を行う予定。改訂にあたっては、関係者で構成される原案改訂委員会を設置する必要があり、日本光学硝子工業会や日本規格協会等と連携しながら、その準備活動を実施する。
  (*)ISO 17411 “Optics and photonics−Optical materials and components−Test method for homogeneity of optical glasses by laser interferometry”

(2)JIS3255-1997「ガラスを基板とした薄膜の付着試験方法」
 日本光学硝子工業会(光学薄膜研究会)において、「プラスチックを基板とした光学薄膜の付着試験方法」に関するJIS 原案作成検討がなされることから、ニューガラスフォーラムが原案作成団体であるJIS3255-1997 との整合性を確認するため、JIS 原案作成委員会に委員として参画し、その推移を把握する。

(3)JIS原案作成団体として、JIS(ガラスの測定・評価方法)の維持・改廃検討を、日本規格協会からの情報収集を含めて継続する。また、ガラス物性や特性の測定、評価技術を中心に、新たな規格化等の必要性(ニーズ)を探っていく。  
 
8.ニューガラスに関連ある内外の団体、学会及び研究機関との交流及び協力 (定款 第4条第1項第8号関係)

(1)セラミックス協会(ガラス部会)やガラス産業連合会(GIC)との連携を密にして学会活動を始めとした協力や参画を行う。特に2022 年は「国際ガラス年(IYG2022)」であり、日本実行委員会の委員としてその活動に直接参加するとともに、GIC を通じてその活動に間接的に協力する。

(2)経済産業省・NEDO ・材料関連団体連絡会(※)に引き続き参加することにより、素材や材料の関連団体との意見・情報交換や、国家プロジェクトの状況、研究開発戦略の動向等の情報収集を図るとともに、適宜その情報の共有化を実施する。
   ※ 経済産業省産業技術環境局研究開発課技術評価室、
    経済産業省製造産業局製造産業技術戦略室、金属技術室、革新素材室、
    国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、
   (一財)化学研究評価機構、
   (一社)日本ファインセラミックス協会、
   (一社)ニューガラスフォーラム、
   (一財)金属系材料研究開発センター、
   (一財)ファインセラミックスセンター、
   (一社)特殊鋼倶楽部

(3)「ガラス産業連合会(GIC)」の環境広報部会の委員、プロセス・材料技術部会およびガラス研究振興部会の事務局、国際ガラス年支援ワーキンググループの事務局を担当して諸活動の推進を行う。特にプロセス・材料技術部会では、(1)項で述べた内容を始め、GIC シンポジウム、大学との交流会開催などでその活動の主導的な役割を担う。また、ガラス研究振興事業はGIC との共催であり、事務局としてGIC との調整を図りつつ、事業を推進する。

9.前各号に掲げるもののほか、本会の目的を達成するために必要な事業 (定款 第4条第1項第9号関係)

(1)溶融シミュレーション事業 (主査:東京工業大学 佐藤 勲 教授)
 NEDO 先導研究「直接ガラス化による革新的省エネルギーガラス溶解技術の研究開発」(2005〜2007 年度)とNEDO プロジェクト「革新的ガラス溶融プロセス技術開発」(2008〜2012 年度)において、ハードウエアである試験炉の開発とそれを支えるソフトウエア“GICFLOW(Glass Intelligent Cord/ Glass Flow Simulator)”が作成された。その後2015 年度より、GICFLOW を活用する上での課題やその解決方法を議論する「討論の部」、および、溶融プロセスのシミュレーション技術を主とした「講演の部」からなる「溶融シミュレーション研究会」を開催してきた。しかしながら、回を進めるにつれて、溶融シミュレーション技術にテーマを絞った「講演の部」の本会による単独開催は徐々に難しくなり、2020 年度末、本会はガラス溶融技術の深掘りに一定の役割を果たしたと判断し、これを終了するに至った。
 2021 年度からは、従来の「討論の部」についてはGICFLOW ユーザーを対象としてより深い議論を実施するための「GICFLOW ユーザー会」に引継ぎ、一方「講演の部」で対象としていた溶融プロセスに関するシミュレーション技術については、他の研究会およびセミナーにて、適宜シミュレーション技術を含めた形で取り上げる形としている。
 2022 年度は上記方針を継続していくとともに、適切なユーザーサポートやメンテナンス体制を維持していく。また、GICFLOW への試用等に関する各種問い合わせにも対応する。

(2)気中溶解技術の普及 
  2022年度も引き続き、NEDOプロジェクト「革新的ガラス溶融プロセス技術開発」(2008〜2012年度)の成果普及活動の一環として、同技術の特徴が発揮しやすいガラス製品分野を中心に、国内企業への技術・ノウハウの提供や必要な指導を行うとともに、実験用の小型バーナーを使用した実用化および新素材開発のための取組み支援活動を進めていく。

(3)ガラス研究振興事業
  日本の大学では2000年ごろから、運営交付金が減少し、科研費などの競争的資金で充当する仕組みに変わってきている。その結果、研究者は長期的視点に基づいて実施するテーマの設定が難しくなり、ガラスの製造に関わる重要な基礎に関する研究予算を獲得する機会が非常に少なくなっている。大学などの公的研究機関での基礎研究成果を基に、産学・産官で連携して研究を実施することが、日本発の高機能ガラスの実現に向けて必
須であるにも関わらず、このような状況は,製造プロセスの高度化や高機能ガラスの製造等に必要な基盤的知見が国内で得にくくなることを意味している。さらに次世代のガラス研究者数の減少、ひいては、日本における研究レベルの低下をも引き起こしかねない。
 以上のような現状を変えていくために,2021 年度にガラス産業連合会(GIC)と共催で「ガラス研究振興事業」を設立した。本事業は、若手・中堅の研究者が実施するガラス産業に役立つ基礎的な研究に対して、産業界から企業の枠を超えて研究支援を行うことにより、ガラス産業界全体が将来に渡って持続的に発展することを期待するものである。
 運営委員会の下に、新たに研究振興委員会およびガラス研究振興協力会を設置し、2021 年度はGIC ガラス研究振興部会および当委員会にて、本事業の制度設計、審査委員の選出等を行った。本事業を運営するための会費は、GIC の各団体やGIC/NGF に所属する各企業からいただいたが、継続して実施することが重要なため、3 年間は継続することを前提とし、3 年後の2024 年度に事業内容を見直すものとしている。
 2021 年度は9 月から12 月の期間、45 才以下の若手研究者に対して、研究テーマの募集を行い、全部で8 件のご応募をいただいた。協力会の中に設けた研究審査会で、提案された研究内容を審査し、2 件のテーマを採択する。1テーマの研究期間は3 年としているが、3 年間分の研究費を初年度にまとめて給付することも可としている。
 2022 年度は制度開始2 年目として、研究振興委員会およびGIC ガラス研究振興部会にて初年度の課題を洗い出し、必要であれば制度の改訂を行う。また2021 年と同様に2022 年秋から研究テーマを募集、2023 年1,2 月に審査を行い、新たに2 件のテーマを採択する予定である。また2022 年秋以降に、2022 年度から研究を開始した2 テーマに関して、より良い研究としていただくために、審査員、委員会委員、さらに会費をご提供いただいた会社のメンバーを交え、中間意見交換会を開催する予定である。


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