事業報告及び計画
2024年度事業報告書  2025年度事業計画

2025年度事業計画
2025年4月1日より2026年3月31日まで
(事業の概要)

 米国トランプ大統領の第二期就任以降、米国国内を始めとした国際情勢には種々の変化が生じており、先が読めない状況にある。エネルギー価格などの高騰は一服しているが、継続して高い水準にある。ガラス産業界の置かれた環境はかなり厳しいものの、カーボンニュートラル時代に対応した考え方、方針の基に、ガラスの高機能化、高付加価値化、製造工程の脱炭素化を支援する活動などを継続して進めていく。併せて、これらを支える人材の確保と育成を支援していきたい。
 ニューガラスフォーラム(NGF)はガラスの技術領域を支える団体であり、今後とも会員企業の期待に応えられるよう、基幹の活動を進めていくとともに、必要な調査とその分析及び提供、従来の活動の重点化や見直し、必要に応じて新しい活動への取り組みを進めていく。なお、2025年7月にNGF創設から40年となることから、「ガラスの本」の発刊に加えて機関誌での40周年特集などを予定している。
 国内の大学におけるガラス基礎研究者の減少などの課題への対応策としてガラス産業連合会(GIC)と共催で「ガラス研究振興プログラム」を立上げ、2022年度より採択テーマへの研究助成を実施している。2024年度には、第二期(2025〜27年度)研究テーマの募集を開始しているが、応募件数は大きく増加している。2025年度は、第一期1年目採択テーマの完了報告会を開催するとともに第二期1年目採択テーマのフォローアップ及び第二期2年目研究テーマの募集を順次進めていく。
 また調査事業として、ガラス熔融プロセスの脱炭素化に関する技術調査を2025年度も継続すると共に、技術課題の整理を進め、定期的に報告会等を開催して情報の共有化を進めていく。併せて大学との連携を継続・強化する。
 ガラスデータベース”INTERGLAD”は、引き続きデータの拡充、機能の向上のための開発を進めると共に、サーバー更新、入力人材確保、サイバーセキュリティ対策など必要な対応、対策を計画的に実施していく。機関誌”NEW GLASS”は、最新の技術情報や新製品情報、技術動向などの情報発信を継続するとともに、産学交流の促進を支援する。また、ガラスの研究・開発・製造・応用に携わる人材の育成を目的とするニューガラス大学院は、対面+Web併用での開催方式が好評であり、非常に多くの参加者があることから、2025年度もこの形式で継続する。研究会、セミナーに関しては、テーマ重複を避けるため2025年度も全テーマを予め決定する形とする。

 以下、定款の箇条に従い、2025年度の事業計画を述べる。

1.ニューガラスに関する産業及び技術開発動向等の情報の収集及び提供 (定款 第4条第1項第1号関係)

 NGFの活動(研究会、セミナー、講演会等)および外部学会等で得た技術開発動向などの情報をホームページや機関誌”NEW GLASSS”を通じて会員へ発信する。ホームページは、「シーズとニーズの出会いの場」と「メーカーとユーザーの積極的な情報交換の場」として運用し、各種のイベント企画などの情報をタイムリーに発信する。

2.ニューガラスの産業及び技術開発等に関する調査 (定款 第4条第1項第2号関係)

 2022年度に開始した「ガラス溶融プロセスにおける脱炭素化技術に関する調査」を2025年度も継続して実施する。同じメッシュでの調査を継続することにより、技術の動向や変化をわかりやすい形で整理できると考える。会員企業への報告会は2026年3月に開催する予定であり、その他に特定の技術分野に特化した技術セミナーの開催を検討する。2023年度、24年度に実施したGlassTrendとの共催セミナーは国内の講師選定が困難であるため2025年度は実施しない予定である。
 2024年度に愛媛大学に奨学寄附金を供与し、水素燃焼が溶融プロセスやガラス物性に与える影響に関する基礎的研究を実施した。泡生成やガラス物性及び実験手法に関する有益な情報が得られており、2025年度も研究を継続する予定である。

4.ニューガラスに関する講習会、講演会、セミナー及び研究会等の開催 (定款 第4条第1項第4号関係)

(1)研究会・セミナーの開催
 2024年度と同様に、ガラス科学技術研究会、評価技術研究会およびニューガラスセミナーを各2回ずつ、計6回開催する。開催方式については現地参加とオンラインを組み合わせたハイブリッド方式を基本とし、見学会も実施する予定である。

@ ガラス科学技術研究会 (主査: 愛媛大学 斎藤 全 教授)
  本研究会は、ニューガラス産業の基盤となる「ガラス基礎技術の発展と普及」を目指し、大学、公的研究機関及び企業における「ガラス技術の新たな展開や顕著な進展に関する話題」を取り上げる。併せて「最近の製品化事例」などを交えながら、産・学・官の第一線で研究開発に携わる方々を講師として、企業の発展に不可欠な「科学的理解と基礎技術の深化」について、参加者が考え、議論し、交流する場を提供する。対象とする基礎技術は、ガラス素材創製、ガラス構造、ガラス表面、溶融・成形・加工技術、計算機科学などである。
 2025年度の候補テーマと開催予定月は下記のとおりである。
 ・ 7月 半導体に用いられるガラス
 ・11月 産業技術総合研究所 関西センター 見学

A 評価技術研究会 (主査: 長岡技術科学大学 本間 剛 教授)
 「ガラス製品の開発支援技術の強化と普及」に向けて、ガラス製品の商品化において求められる各種評価技術について、企業における現状と課題、それらに関連する大学・公的研究機関の研究や類似材料の評価例などを話題として取り上げる。産・学・官の第一線で研究開発に携わる方々を講師として、「評価技術および評価の深掘と共有化」を目的とし、ガラスとその表面に関する分析・解析技術、熱物性、機械物性、光物性、形状等の測定技術を対象とする。
 2025年度のテーマ候補と開催予定月は下記のとおりである。
 ・ 8月 分析・評価を助けるAI・ロボティクス
 ・12月 エレクトロニクスを支えるガラスの評価技術

B ニューガラスセミナー (主査: 滋賀県立大学 松岡 純 教授)
 ニューガラス製品の研究開発に携わる研究者・技術者等を対象に、ガラス技術およびニューガラス応用製品について、話題性の高い最新技術動向等をタイムリーに紹介することを目的として開催している。
 2025年度のテーマと開催予定月は下記のとおりである。
 ・ 6月 ガラスの研磨・表面処理
 ・10月 代替原料とリサイクル

(3)講座の開催  

ニューガラス大学院 (委員長: 北海道大学 忠永 清治 教授)
 ガラスの研究・開発・製造・応用に携わる人材の育成に寄与するため、大学教員や企業の研究者・技術者等の各分野の一流講師による、基礎・応用課程の計17テーマでの講座を各2日、計4日間の日程で10月にAGC研修センターで開催する。ニューガラス大学院は、単に講義を聞くだけでなく、その場で質問し、また懇親会等を通じて講師や受講者同士が知り合える場とすることも目的の一つである。新型コロナが収束し、2022年度から対面講義とWeb参加を組み合わせた形式で実施したところ、2023年度、2024年度とも、多数の方にご参加いただいた。そのため本年もこの形式で実施する予定である。
 基礎課程では材料科学からガラスの諸物性について、また応用課程では製造フローに沿っての各技術の講座とする。企業の若手研究者・技術者や大学院生の他に、GIC会員やガラスに関心を持つユーザー及び他分野の研究者・技術者などにも広く呼び掛け、中堅の方々の受講も募る予定である。なお、2025年度の講師はニューガラス大学院委員会にて選定作業中である。

(4)若手懇談会の開催 (会長: 住友電気工業(株)佐藤 慎)
 若手懇談会は、当会の会員企業及び当会に関連の深い産・学・官の若手(2025年度登録会員15名)が、最新のニューガラスに関する研究・開発課題・用途に関し、意見交換を行うとともに、会員間の人的交流を行う場である。そのため開催は対面方式とする。
 本会は産・学より選出された役員(11名)が、年4回開催する役員会にて運営する。本年度は昨年度と同様に意図して通年テーマは設けず「興味を広げる」という方針に基づき、年4回(5月、7月、10月、2026年2月)の講演会を開催する。また、将来のガラス分野の研究・開発を担う若手人材の啓蒙や育成の観点から、各回3講演の内1つを教育的・基礎的な講演とする。
 7月は現場を直に知る機会とし、また、知見を拡げる場を提供する目的から、見学会を開催する。本年度は富山市ガラス関連施設(富山市ガラス美術館、富山ガラス工房、富山ガラス造形研究所)を訪問し、「ガラスと付加価値」、「なぜガラスなのか」、「ガラスでなければできないことは何なのか」を主題に、芸術・産業(または行政)の両面から学ぶ機会とする。
 なお、講演会、見学会とも若手懇談会会員のみならず、前年度会員や過去の参加者などからも参加を募る。

(5)見学会の開催
  ガラスに関する知識・知見の向上と人的交流を図るため、会員企業やガラスに係わる企業・施設等を訪問する見学会を会員対象に年1〜2回開催する。内1回は若手懇談会の見学会と兼ねて実施する。その他に、会員のニーズに基づいて開催を検討する。

4.ニューガラスに関連するデータベースの構築、維持及びその提供 (定款 第4条第1項第5号関係)

国際ガラスデータベース”INTERGLAD”(委員長: 東京大学 井上 博之 教授 :2024年度にて退官のため交代予定 )   
  データベースを充実させるための重要な要素であるガラス特性及び構造データの追加登録を今年度も継続して行う。毎年、特性と構造データを合わせて約1万件のガラスを登録しており、現在約40.3万のガラスデータ数となっている(2025年2月時点)。変化の著しいインターネット環境に対応して、既存ユーザーの利便性を損なわないよう、現行のVer8機能の継続的な改良・整備を進める。
 普及のためのPR活動や講習会を開催し、これらを通じて得られる機能改良などに関するユーザーのご要望への対応を行う。2020年度から講習会の開催方法をWebに変更したところ、多くの方にご参加いただいているので、引き続きWeb方式を採用する予定である。また2025年度も2回の講習会のうち1回は、初めてINTERGLADを利用するユーザー向けとし、普及を促進する。
 事業継続のためには、セキュリティ強化を含むシステムの保守・改善が必要であり、併せてデータ入力者を確保するための入力単価の改訂が必要である。これらの原資を確保するため、INTERGLAD使用料の増額が必要であると考えている。2025年度は、まず使用頻度の高いヘビーユーザーに応分の負担を求める具体的な課金方法を検討する予定としている。

5.ニューガラスに関連する産業及び科学技術に関する機関誌の発行 (定款 第4条第1項第6号関係)

機関誌“NEW GLASS”の発行 (編集委員長: 名古屋工業大学 早川 知克 教授)
 ニューガラスに関する国内外の新製品・新技術の紹介、ニュース、関連産業の動向や技術解説等を内容とした機関紙“NEW GLASS”を年3回(7月、11月、3月)発行し、会員や一般購読者(昨年度約70名)に役立つ情報を提供する。
 発行にあたっては、学、産で構成される機関誌編集委員会を年3回開催する。掲載記事の内、特に「特集記事」は、話題性が高い技術テーマを取り上げ、その分野の産・学の方に執筆いただき、毎回、総論を含めて体系的に掲載できるよう努める。
 なお、11月号では「ニューガラスフォーラム40周年」の特集記事を掲載する。また、産学交流促進を目的として、2025年度より大学研究室の紹介記事の連載を予定している。

6.ニューガラスに関する標準化・規格化の調査研究 (定款 第4条第1項第7号関係)
  
(1)標準化委員会
 NGFがこれまでに制定に関わったJISは6件あり、これらは5年ごとに見直しを行う必要がある。2024年度は3件の対象JISがあり、関係者へのヒアリングの結果、1件(JIS R3102 ガラスの平均線膨張率係数の測定方法)について改正の方向で検討することとしている。一方で、改正の実施手順、更には見直し手順自体もルール化されていないことから、現在活動休止中の「標準化委員会」を再開し、そこが中心となって改正作業や定期見直しを組織的に行う方針を決定した。標準化委員会の再開に向けて、少人数(4名程度を想定)の準備ワーキンググループを立ち上げ、委員会メンバーや活動内容を議論していくこととし、これを2024年12月の第38回理事会に諮り、承認をいただいた。
 現時点で既に準備ワーキンググループの人選は完了していることから、2025年度は上期に準備ワーキンググループでの議論を行い、下期より標準化委員会の活動再開を予定している。
 
7.ニューガラスに関連ある内外の団体、学会及び研究機関との交流及び協力 (定款 第4条第1項第8号関係)

(1)GICやセラミックス協会(ガラス部会)との連携を密にし、学会活動を始めとした協力や参画を行う。また、日本セラミックス協会主催のガラス・フォトニクス討論会など関連学会や、ガラス産業界への貢献を目的とした活動などへ積極的に参画していく。

(2)経済産業省・NEDO・材料関連団体連絡会(※)に引き続き参加することにより、素材や材料の関連団体との意見・情報交換や、国家プロジェクトの状況、研究開発戦略の動向等の情報収集を図るとともに、適宜その情報の共有化を実施する。

  ※ 経済産業省産業技術環境局、
    経済産業省製造産業局、
    国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、
   (一財)化学研究評価機構、
   (一社)日本ファインセラミックス協会、
   (一社)ニューガラスフォーラム、
   (一財)金属系材料研究開発センター、
   (一財)ファインセラミックスセンター、
   (一社)特殊鋼倶楽部

(3)GIC環境広報部会の委員、プロセス・材料技術部会およびガラス研究振興部会の事務局を担当して諸活動の推進を行う。特にプロセス・材料技術部会では、(1)項で述べた内容を始め、GICシンポジウム、大学との交流会開催などでその活動の主導的な役割を担う。また、ガラス研究振興事業はGICとの共催であり、事務局としてGICとの調整を図りつつ、ガラス研究振興協力会の運営を通じて事業を推進する。

8.前各号に掲げるもののほか、本会の目的を達成するために必要な事業  (定款 第4条第1項第9号関係)

(1)気中溶解技術の普及 
 2025年度も引き続きNEDOプロジェクト「革新的ガラス溶融プロセス技術開発」(2008〜2012年度)の成果普及活動の一環として、同技術の特徴が発揮しやすいガラス製品分野を中心に、国内企業への技術・ノウハウの提供や必要な指導を行うとともに、実験用の小型バーナーを使用した実用化および新素材開発のための取り組み支援活動を進めていく。

(2)ガラス研究振興事業
 日本の大学では2000年ごろから、運営交付金が減少し、科研費などの競争的資金で充当する仕組みに変わってきていることもあり、ガラスの研究室や研究者の減少が過去20年で顕著になっている。このことは,製造プロセスの高度化や高機能ガラスの製造等に必要な基盤的知見が国内で得にくくなることを意味し、ひいては、日本におけるガラス研究レベルの低下をも引き起こしかねない。以上のような現状を憂え,2021年度にGICと共催で「ガラス研究振興プログラム」を設立した。
 本事業は、若手・中堅の研究者が実施するガラス産業に役立つ基礎的な研究に対して、産業界から企業の枠を超えて研究支援を行うことにより、ガラス産業界全体が将来に渡って持続的に発展することを期待するものである。対象は45才以下の研究者とし、1テーマの研究期間は3年、資金は300〜900万円とし、初年度一括供与とすることで、早期の設備導入が可能であることなどを特徴としている。
 2022年度より第一期3年間の助成活動を実施した結果、本事業の有効性及び必要性が認知され、理事会および定時総会での承認を経て2025年度より第二期3年間の研究助成プログラムがスタートする。2025年度は、応募要項の見直しを実施するとともに、本プログラムの認知度を更に向上させるべく、全国の国公立、私立大学および公的研究機関に直接連絡して各大学等の補助金リストへの本プログラムの掲載を依頼するとともに、本プログラムについてのポスター作成・配付やWeb説明会の開催などの研究者に対する広報活動を継続する。また、NGF定時総会の際に第一期1年目の採択研究テーマ2件の完了報告会を公開開催し、ご協賛企業・団体のみならず、広く一般NGF会員及びGIC加盟団体会員などにも参加を募る予定としている。

(3)ガラスの本の発刊
 2025年7月にNGFが設立40周年を迎えるのを記念する事業の一環として、ガラスに関する入門書となる本の発刊準備を進めている。長岡技術科学大学の本間剛教授を代表執筆者とし、NGF会員各社とガラスを専門とする大学の先生方に執筆を担当いただき、2025年3月末に出版予定である。
 ガラスに係る初級ビジネスマン・技術者・大学生に適した入門書であるので、ホームページなどで広報に努める。

以上


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